企業インタビュー(6) 株式会社クラダシ様

株式会社クラダシ 代表取締役社長 関藤 竜也 氏

通称「五反田バレー」地区をベースに、STI(科学技術イノベーション)の力でSDGs(2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標)などの社会課題に挑戦する、素敵な企業をご紹介するシリーズ。

第六弾は、社会貢献型フードシェアリングプラットフォームを提供する、株式会社クラダシ様です。

2019年10月17日、東五反田の五反田NTビル2階にある株式会社クラダシ様におじゃまして、代表取締役社長の関藤竜也様にお話をうかがいました。

株式会社クラダシ 代表取締役社長 関藤 竜也 氏

ーー取材場所として使わせていただいた応接スペースは、クラダシが取り扱う様々な食品メーカーの商品が棚いっぱいに並んでいて、まるでお買い物をしにきたようなワクワクした気分になりました!

シェアリングエコノミー時代のフードシェアリングプラットフォーム

ーーさっそくですが、関藤さん、クラダシとは、どんな会社なのでしょうか?

クラダシは、食品ロスを削減するとをミッションに掲げている会社です。国連が2015年9月にSDGsを採択し、目標12として「つくる責任、つかう責任」を指針としてしめしています。

それより一年以上早く、食品ロスを削減するための会社を設立しました。2018年には、経済的・社会的・環境的に優れた活動を評価いただき、第6回グッドライフアワード環境大臣賞(企業部門)をいただきました。私たちがシェアリングエコノミー時代のフードシェアリングプラットフォームとして2015年2月にローンチして展開している「KURADASHI.jp」は、日本初にして最大級の食品ロス削減サイトです。

クラダシで取り扱う商品サンプルがにぎやかに並ぶ棚

最近、食品ロスがビッグワードになってきましたが、そもそも強烈なインパクトを受けた原体験がありました。私が大学を卒業して社会人になったのが1995年ですが、内定が決まっていた1月に実家が阪神淡路大震災で被災しました。大阪府豊中市なので震源地から40キロほど離れてはいましたが、私の父も倒れた本棚に挟まってという状況でした。テレビから流れる、ゴジラが踏み倒したような神戸の中心地でビルが崩壊し、火の手が上がり、阪神高速道路が倒れ、分裂し、バスがつららのようにぶら下がっている映像に驚愕し、気づけばバックパックに救援物資を詰め込み神戸に向かっていました。到着したのはレスキュー隊よりも早かったほどで、思い出すと今でも胸がグッとなりますが、うめき声が聞こえてきて、その時、一人で生きる限界を悟ったのです。もうすぐ社会人になるという時期だったこともあり、社会には、誰かが何かを思った時にできるように、プラットフォームのような仕組みが必要だなと実感しました。

「一人で生きる限界」からソーシャルな仕組みの創出へ

入社後、98年に企業派遣留学で北京の大学に行き、その後トレーニーとして大学で学び、工場の生産管理をしました。上海の現地法人では、今から20年前の話ですが、「世界の工場」と言われていた中国の実情を目の当たりにしました。工賃が安いということで、食品のみならず、あらゆるものが中国で作られていました。農村から来た女工さんが中心で、製品の仕上がりにはびっくりすることも多かったです。たとえば、コンビニエンスストアのレジ前チキン。日本はサイズや形といった仕様書の許容範囲の精度が極めて高いです。それが全く仕様書通りに上がって来ないため、食べられるにもかかわらずコンテナ単位で全廃棄という現場をたくさん見て、これは社会課題だ、誰かが何とかしないと、大袈裟でなく地球が持たないぞ、と思いました。農産物もですが、海洋資源でもわかりやすい例があります。全国の居酒屋チェーンに卸す3匹で298円のような子持ちししゃもをロシアから輸入するのですが、港に着いて蓋を開けてみたら、子がいない。これも食べられるのですが、オーダーと違う、急に保冷倉庫が探せない、仮に見つかったところでいつ売りが立つか、どこに売るかわからない、コスト的に合わない。ということで泣く泣く、どこかの水族館のオットセイの餌で100キロほど取ってもらったのですが、何トンも捨てていました。そういう状況が、日本のみならず世界で同時多発的に起こっているということが、ゆくゆく間違いなく社会問題になってくるし、誰かがやらないといけないというのが、そもそも起業のきっかけでした。ソーシャルビジネスとしてサステナブルに手がけないといけないと思い続けて、5年前に、具体的に食品ロスを削減するために設立したのが、現・株式会社クラダシです。

ーー今、世界には、SDGsに掲げられているような様々な課題があります。その中でもクラダシがグローバルな課題として重く見ているのが「食品ロス削減」ということですね。

農林水産省が発表した日本の平成30年度食料自給率(カロリーベース)は、前年度の38%から1%落ちて37%、その他は諸外国から輸入しています。そこには、コーヒー豆やカカオの生産現場での児童労働問題などもたくさんあると思うのですが、643万トン(平成28年度推計、消費者庁)に及ぶ日本の食品ロスは、日本の米の生産量がおよそ800万トンという中で、それほどの食品を毎年捨てているわけですから大問題です。わかりやすく例えると、国民一人あたりが毎日おにぎり1個捨てている。一方、世界に目を向けると8億2100万人(2018年、国連)が飢餓で苦しんでいる現状。また、国内でも実は7人に1人の子どもが相対的貧困という現状(2015年、厚生労働省)。そんな中でなぜ捨てているのか。それには様々な問題が絡み、動き、流れのようなものがあるので、一気に全部を解決あるいは改善するのは難しいですが、最近ではエシカル消費という言葉で表現される正しい選択をしていった結果、世の中がよりよくなっていくような、前述のソリューション、インフラのようなものを作る必要があると思いました。SDGsで言うとターゲット12.3「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる。」を皮切りに11項目のターゲットに私たちは貢献しています。

「正しい選択」の結果、社会がよくなっていくようなインフラ

ーーそういった食品ロス削減の課題に挑戦するクラダシの取り組みや、課題解決につながる技術について、お聞かせください。

食品ロス、先ほど643万トンと申し上げた中には、家庭系と事業系があります。家庭系が291万トン、残りが事業系。事業系の約3分の2が、いわゆるサプライチェーン上で起こっている食品ロスで、残りの3分の1が、飲食店の残渣。このサプライチェーン上のいちばんボリュームが大きいところを先ずは手掛けています。事業者側の産業構造は、もともと商社にいて売りも買いもやりながら見てきましたから熟知しています。メーカーは商品の生みの親としてもちろんのこと、問屋、小売にしても、捨てたくて捨てている会社は、一社もありません。心苦しくてしょうがないのです。そうせざるを得ない事情は何かというと、ブランドイメージの低下、市場価格の崩壊、それらを踏まえた取引先への悪影響や買い控えされることを恐れるが故。そして小売業界における納品期限。1/3ルールという暗黙のルールがあります。欠品して高いペナルティを払うよりは、欠品しないよう過剰に作って捨てたほうが経済的ダメージがましだという考えもあります。たとえば、賞味期間が3カ月の商品だと、卸業者は製造日から数えて賞味期間の1/3にあたる1カ月以内にスーパーなどの小売店に納品しなければなりません。それを過ぎると店頭に並ぶことなく、残り2ヶ月もあるにもかかわらず廃棄の対象となってしまうのです。

納品期限が切れると大きく分けると3つの処理のしかたしかありません。1つは、クローズドマーケットと言われる、社内販売やファミリーセール。もう1つは、安売り、ディスカウンタールートでの販売。そうでなければ廃棄。3つの選択肢しかありません。

1990年代後半ぐらいからネットショップ、ECが本格化し、いわゆるポータルサイト、価格比較サイトも出てきました。最安値情報が公となり価格競争が始まります。携帯も、アナログからデジタルへ、そしてスマートフォンへと進化を遂げSNSによりクローズドマーケット情報が公開されます。余剰在庫の世界だけは進化を遂げず、最初のクローズドマーケットは福利厚生と結びつけて、いちばん体の良い販売方法だったのですが崩壊し始めました。私がもといた商社でも社販がなくなりました。ブログ、Facebook、Twitter、インスタ、SNSによりクローズド情報が公の場に公開されます。上司が部下にそれらを社販での大量購入を強要するパワハラ問題が発生。また、ディスカウンタールートではブローカーさんのいわゆる反社チェック問題が発生し、トレーサビリティと食の絶対的安全の担保がされないという問題がおきます。一方、SDGsの観点から、令和元年5月24日に「食品ロス削減推進法案」が可決、10月16日の世界食料デーを含む世界食料デー月間である10月1日に食品ロス削減推進法が施行されました。とるべき最適な選択肢がない。では、どうしよう⁉

余剰在庫の世界に「1.5次流通価革命」

そこで、これまでのようにクローズドマーケットでの販売かディスカウンタールートでの販売か、廃棄という3択以外に、新しいマーケットを作る必要があると思いました。アマゾンや楽天のようなビッグプレイヤーがいるECの1次流通市場で、昨年度は食品の流通規模は1兆6,919億円(2019年、経済産業省)。リユースの方向でもメルカリのような2次流通のビッグプレイヤーが登場しました。食品を含め廃棄していたものを市場形成できれば22兆円もの市場が生まれます。経済的損失、環境負荷をなくし “もったいないを価値へ” CSR、SDGs、ESG的にもコーポレートバリューを高める新しい価値を創造し新しいマーケットを創る。クラダシのビジネスモデルで成し得たい世界観です。それを私は「1.5次流通革命」と呼んでいます。

第6回グッドライフアワード環境大臣賞(企業部門)受賞

ーー具体的には、どのようなシステムなのですか?

KURADASHI.jpのウェブサイトにおける社会貢献活動に賛同いただいたメーカー様より商品を協賛価格にてご提供いただくことにより、当サイトをご利用いただく皆様にはお手頃な価格で商品をご購入できるようになっております。

ウェブサイトに掲載されている商品には、商品毎に社会活動団体への支援金額が設定されており、ご購入いただくことでその設定金額が指定の社会活動団体に寄付されます。活動支援内容については、支援レポートにてご報告いたします。

商品をご購入いただくと、社会貢献度にて支援金額の累計だけでなくKURADASHI.jpが指標化し、算出したキズナポイントで各自の社会貢献活動をご確認いただけます。

きちんと世の中のためになることがブランド価値向上に

他の商品よりも支援金額が高めに設定されているものや緊急支援を要するもの等、より多くの方にご支援して頂きたい商品には、「キズナ」アイコンが表記されています。

私たちの暮らしの中でできる支援の一例があります。特に最近では台風で千葉県が一次産品に関してざっと100億とも言われる大きな被害を受けました。南房総で長引く停電により、高級食材の伊勢海老、アワビ、サザエが酸欠で死んだのがざっと1億以上になっているというような状況なのです。そのような、台風・豪雨などの被害を頻繁に受けるという地方自治体と連携を深めています。「クラダシさん、今ここが大変です」という情報を瞬時に価値あるものにするには、たとえば「伊勢海老が一尾1000円では買えないけど、そういう状況で地域支援につながるのであれば食べたい」と思う人とつなぐことです。KURADASHI.jpを活用していただくことで、結果として漁業関係者の所得向上、地域経済の発展にうまくつなげていければという思いがあります。

出品者である、生産者である製造メーカーや農業漁業の一次産業従事者のロスをすべからくなくす。そこで得た利益・売上を地域経済に還元する。消費者はお財布にもエコ、環境にもエコで、まさに「三方良し」だねと言っていただけています。

クラダシで商品を買っていただくことイコール食品ロス削減に貢献していることでもあり、さらに気軽に、例えばワンちゃん、ネコちゃんを飼っています、動物の殺処分ってちょっと気になるわ、という方は、動物保護のNPOに支援ができたりというのが、自分で選べる仕組みになっています。

NPOにとっては、寄付を受けて活動の幅が広がります。私たちは売上から出すので、税金をさらに寄付金に対しても払うというのは、もちろん承知の上です。海外支援をしている団体などから感謝されるのが、渡航予定が組みやすいということです。クラダシが順当に売上をあげているので、毎年の予算として見込めるからということです。また、支援する側の団体からも新しい寄付の形として評価されています。何かいいことはしたいと皆、思っている。ということを具体的にできる場が、1995年の阪神淡路の時に思い描いたような、インフラというかソリューションのような場を提供したいという夢を、食品ロスにからめて実現しているというのが、クラダシの特徴かなと思います。

多数の団体からクラダシへの感謝状、表彰状

思いを具体的にできる場

ーーなるほど、多数の団体からクラダシへの感謝状、表彰状が並んでいる理由が、よくわかりました。フードバンクからのも、ありますね。

全国にフードバンクは増えてきて、今70いくつあるという話です。社会福祉としてフードバンクは素晴らしい活動をされています。もともとフードバンクというのはアメリカからやって来たビジネスモデルですが、なかなか日本に馴染みにくいというか根付きにくい。最大手が、東京のチャールズさんが率いるセカンドハーベストで、素晴らしい活動だと思います。サプライチェーンとのつながりで言うと、10月1日に施行された法案にも盛り込まれている内容でもあり、使い切れない、余っているのであれば、足りていないところにあげましょう、つまりフードバンクやこども食堂などを有効活用しようということなのですが、企業側からすると、運用面で難しい問題が多々ありました。

例えば、「わかりました。では100ケース寄付しましょう」となった時に、その100ケースを受ける倉庫が寄付を受ける側にはない。そこで、「2ケースずつ50回届けてもらっていいですか」というリクエストになる。なかなか企業の生産合理性に合わない。

あるいは、関東でもフードバンクはいくつもあるのですが、寄付となると平等性が問われます。上場企業はESGの観点もあり、平等にするためにはあえて在庫を残さないといけない、食品ロス削減には本末転倒…という不条理も生じてしまうのです。

あるいは、品質は間違いないはずですが、もしも誰かがお腹痛くなったら誰が責任を取るの?というようなこともある。

そういった、不合意・不条理の解決策として、クラダシフードバンク支援基金というのを作りました。前述のような、思いはあってもなかなかうまく回っていないというところのめぐりを良くするとか、製品には当然PL法などが絡んでくるのですが、そういう、販売者としてきちんとしなければいけない、手間暇がかかる部分をハブとなって代行する。例えば、あるメーカーが100ケース寄付するよと言った時に、私たちのロジスティックに入れていただいて、70いくつある団体にそれを私たちが配送する。宅配業者とも連携して、流通のビジネスモデルに織り込んでいます。

サステナビリティに不可欠な経済合理性

そういう経済合理性が自分たちとしても担保できているので、フードバンクへの支援も、スタート当初からフードバンク山梨を支援させていただいてきましたが、さらなる全国展開という意味で、基金を作り、売上の一部をプールして資金として使っていきたいと思っています。

ーークラダシの経営者として、イノベーティブなアイデアの創出や、イノベーティブ人財の育成について、どのような仕組みづくりや工夫をしていますか?

解決したいという思いはあるのだけど置いてけぼりになるという社会課題を改善するには、やはり思いだけではだめで、経済合理性というか、経済面で成り立たないと、なかなか長続きしません。世の中、人のため、環境のために良いことを、どうやって長続きさせるか、サステナブルにやっていかないと、一過性のもので終わってしまう。その究極が、自分のためにやったことが結果的に他人のためになる、自分のためのお買い物が他人のためになるってちょっと素敵、そういうソリューション、仕組みが、極めて重要かと思います。

例えば、前述のクラダシフードバンク支援基金の前に、2019年2月にクラダシ地方創生基金を創設しました。人手不足に悩む地方農家へ、旅費・交通費や宿泊費などをKURADASHI地方創生基金が支援し、社会貢献型インターンシップ「KURADASHI Challenge」として学生を派遣。学生が担い手となり、未収穫となっていた一次産品を収穫し、食品ロスの削減を目指します。収穫した後は、KURADASHI.jpで販売し、売り上げの一部を地方農家とKURADASHI地方創生基金に還元。学生と地方農家をつなぐエコシステムを実現し、未収穫産品の削減と地域社会の新たな発展を図ります。

株式会社クラダシ 代表取締役社長 関藤 竜也 氏

「もったいないを価値に」

クラダシ地方創生基金が目指すのは、SDGsの2030年のゴールの中で、ゴール12のターゲットにある、食品ロスを半減させましょうということです。3年前のG7環境大臣総会でも各国の首脳陣が一定要素の確認をし、フランスではもう早々に法制化されていたりします。一方で、日本は地方自治体が全国でざっと1800市区町村ある中で、政府発表によれば、なかなか経済的な自立ができない市区町村がちょうどその半分、町が750、村が150です。それをもっと分析すると、一次産業従事者が地方には多いわけですが、その多くが人手不足と事業承継の問題を抱えています。その結果、本来ならば売れて利益になるはずのものを、市場価格のバランスを見て潰していったりとか、収穫せずに畑の肥やしにしていたら鹿が大量に繁殖して駆除しないといけないとか、税金の無駄遣いとも言えることが起きています。「もったいないを価値に」というのが私たちのビジネスのサブタイトルでもあるのですが、そのような無駄とされてきたものに価値付けをする必要があると思います。

クラダシ地方創生基金でどう成し得るかというと、地方では一次産業従事者の平均年齢が60を越えてきて、あと5年、10年できるかなと。政府の発表によれば、今後、人手不足による未収穫のロスというのが、いっぱい出てくるのです。さくらんぼの例がわかりやすいですが、収穫期の2週間でバッとできて集荷して、1年の中の8割がそこの売上です。そうすると当然、市場は飽和状態になるから価格もつかない。普段はご夫婦でされていて、収穫時期はパートやアルバイトをたくさん雇って、せっかく作っても、競りにかけると、色が乗っていないとか、形が悪いとかで、はねられたり。そういう課題解決に必要な力を、前述のフードバンクの場合と同じく、足りている人と足りていない人という観点で探してつなごうというのが、クラダシ地方創生基金です。日本の若い労働力である学生には思いも時間もあるが、無いのはお金。その彼らを集めて、第一回目に行ったのが、種子島です。サトウキビの収穫のお手伝いに、2月16日から3月29日まで、大学生15人に行ってもらいました。これは社会貢献型インターンシップないしチャレンジ、通称クラチャレです。イメージとしては3〜4年後ぐらいに、いろいろな地方自治体と連携ができていて、「どうする?富良野にする?出雲にする?どこにする?」というのを学生たちがSNSを使ってやり取りをしていて、「あそこのボランティアへ行こうよ。だってクラダシが全部出してくれるから」と。学生にとっては、ただで旅行ができたとか、友情が育めたとか、第二のふるさとが生まれたとか、それが現地の役に立ったとか、それを就活で言うと少し有利だとか、そういうメリットがあります。

学生を流動させ関係人口を作る

現地にとっては、直接的な労働力の確保に加えて、将来的な関係人口を作る、人を流動させるということが極めて重要かなと思います。高齢者人口がピークを迎える2040年ごろを見据え、地方自治体による人の奪い合いのようなことが水面下でもう始まっています。Iターン、Uターン、Jターンなど、新規就業者への補助金制度や、いわゆるテレワークで、時間や場所に制約されない働き方の導入など。そうした地方にとって、クラチャレを通じて関わりを持った学生などが「関係人口」の創出につながっていくというメリットがあります。

ということで、大学生には思い一つを持って行ってもらえばいいというスタイルですね。少し余談になりますが、サトウキビの生産って、砂糖・塩・タバコは日本の農水が守ってきた産業でもあるのですが、守りすぎてちょっと脆弱で古いのです。私もこのクラダシを通して知っていったことなのですが、サトウキビの生産の北限が種子島にありまして、キビ農家が育てて製糖工場に売る価格って1トン4千円なのです。それでは全然生活できないから、国が補助金をその4倍にあたるトンあたり1万6千円補助しているのです。生産農家が儲からないからどんどんやめていっている。生産農家がいなくなると、もしくはサトウキビがちゃんと収穫されないと、製糖工場は閉鎖しないといけない。閉鎖するということは役場にお金が落ちない。という、まさに持続可能のマイナス方向が、種子島のサトウキビのみならず、全国で同時に起こっています。その状況に、少しでも役に立ちたいという思いがあります。

ーー小中学生、高校生、大学生など若い世代に伝えたいメッセージをおねがいします。

大学生のみならず、高校、中学生にも接する機会があり、びっくりすることに、新宿のとある優秀な中学校の方から連絡をいただいて、卒論のテーマが食品ロスだと言うのです。中学生でも卒論があるのですね。私が大学生の時よりも、今の子たちの社会課題に対する意識がすごく強いなと感じます。クラチャレを通して、それを実現できる場を、クラダシとしてもどんどん展開したいと思っていますし、一般社団法人食品ロス推進機構なるものを設立するつもりでもあったりするのですが、やはり思うことが実行できる世の中である必要がありますし、学生の皆さんにはぜひ、やってみるということが必要かなと思います。

日本の玄関口からITを駆使

ーークラダシをはじめ、テクノロジーで社会課題に挑戦するイノベーティブな企業が集まる、通称「五反田バレー」地区の魅力や、企業と地域の関わりについて、教えて下さい。

品川区は日本の玄関口だと思うのです。新幹線、羽田空港などへの立地的な利便性も含め、歴史的にもそうでした。というところから、まさに私たちのITを駆使して、いわゆるOtoO(Online to Online)というか、農家ってどんどんシステムとかアグリテックとか、ドローンが飛んで農薬散布とかになってくるけど、それって各農家に入るのは何年後?だったり、実際、私たちが農家との取引をする時に、彼らはPCを使えなかったり、使わなかったりするので、電話・FAXでやり取りするのです。実際、地方でIT活用を手掛ける中で、品川区ないし私たちの所在がある五反田においても、個々に素晴らしい企業もたくさんあるので、皆に注目されるような連携のしかたを、より一層できていけたらいいなと思います。私たちが今、所在のあるのが東五反田なのですが、その前にいたのが西五反田で、この界隈が好きだなというのもありまして、今後は身近な足元にも目を向けて、そこの企業との関係性を未来のために持って行ければなというのをあらためて思う次第です。

品川区社会貢献製品認定企業 株式会社クラダシによるイベント『映画上映&講演会~食品ロス削減について考える1日~』– 2019年10月27日(日)品川産業支援交流施設SHIP

食品ロスに関するドキュメンタリー映画『0円キッチン』の上映や、食品ロス問題専門家である井出留美氏の講演、株式会社クラダシ代表取締役社長の関藤氏による、お得にお気軽に社会貢献できる仕組みの紹介などがあり、約60名の参加者が集いました。

聞き手:木村京子(エシカルコンシェルジュ)

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