企業インタビュー(2) 株式会社CAMI&Co.様

通称「五反田バレー」地区をベースに、STI(科学技術イノベーション)の力でSDGs(2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標)などの社会課題に挑戦する、素敵な企業をご紹介するシリーズ。

第二弾は、IoTでデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する、株式会社CAMI&Co.様です。

2019年9月20日、東五反田の五反田S&Lビル7階にある株式会社CAMI&Co.(キャミーアンドコー)様におじゃまして、CEO神谷雅史様にお話をうかがいました。今回は「次世代レポーター」として立正大学品川キャンパスの学生も取材に参加しました!

また、株式会社CAMI&Co.は、この取材から10日後の2019年10月2日、新サービス 「IoT-DX-Kit」をリリース、同時にRPAホールディングス株式会社との資本業務提携を発表しました。当日、博報堂ラーニングスタジオで開催された発表会も取材させていただきましたので、記事の最後にはその様子も併せてお伝えします。

株式会社CAMI&Co. 代表取締役 神谷 雅史 氏

ーー2019年3月に神谷さんが出版された『最新 図解で早わかり IoTビジネスがまるごとわかる本』にサインをいただいた後、早速インタビューに入り、専門的なお話をわかりやすくかみくだいて教えていただきました。

五反田バレーの企業株式会社Cami & Co.のPaPeRo iによる紹介。
2019年09月20日撮影。©︎(有)ラウンドテーブルコム。2019年度品川区五反田バレー魅力発信事業。

IoT+DX→新たな価値創出

ーーCAMI&Co.とは、どんな会社ですか?

すべてのモノをIoT化し、インターネットに繋げて新たな価値を生む、というのが株式会社CAMI&Co.の大きなミッションです。創業当初からIoTに関するコンサルティング、ハード製作、ソフト開発、教育等に取り組んできました。もともと私は大学で、いつでもどこでも必要な情報に繋がるというユビキタスの研究をしていました。それが15年経っても全然進んでいないことがもどかしく、どうしたらもっと進むだろうかと、そのような環境の普及を促進する会社を始めました。

最近は、IoTを普及させた先にある「デジタルトランスフォーメーション(以下DX)」をキーワードに活動しています。IoTを使って全産業でDXを巻き起こすことが、豊かな世界を実現することだと考えています。

株式会社CAMI&Co. 受付

ーー今、世界には、SDGsに掲げられているような様々な課題がありますが、CAMI&Co.が目指す「豊かな社会」とは?

我々が目指す「豊かな世界」とは、すべてのモノがIoT化され、DXが実現すると、人にとって、より便利な社会になる、時間を有効に使える、人と人がより繋がる、コミュニケーションが豊かになる、そういう世界ですね。

ーーそういった社会課題に挑戦するCAMI&Co.の取り組みや、課題解決につながる技術についてお聞かせください。

2019年10月2日に弊社からIoT-DX-Kitという格安IoT/DX環境構築ソリューションをリリースします。従来、IoTやDXを実現するには、技術的な課題があり、膨大なコスト・時間がかかっていました。そのため、IoT/DXの導入率がなかなか伸びませんでした。「IoT-DX-Kit」は、そのような技術・コスト・時間の問題を解決し、日本をはじめ世界中のIoT/DXを実現する、革新的なサービスです。

これまでは、すべてのモノをIoT化するとなると、近くにアンテナや基地局がないとできませんでした。ところが最近、その場から数十キロ、しかも超ローパワーで飛ぶ通信技術が開発されてきて、今までできなかった、すべてのモノをIoT化することができるようになりました。我々は第一弾として自社開発の基板を作り、月額1,000円*から1,000種**のIoT/DXソリューションが使えるサービスのラインアップをリリースします。それによって、IoTもDXも身近になり、人々の生活が今までより便利になっていくでしょうね。(*キャンペーン価格を含む、**随時開発中)

手軽に、シームレスに。技術を意識せずに、IoTを自然に使っている、そういう世界が来ると思っています。もともとユビキタスがそういう考え方に基づいていたのですが、IoTになるともう少し概念が広がったため、いつでもどこでもという感じではなくなっていたのが、再びユビキタスの概念に近いところに戻ってきたのかなという感じです。

手軽に、身近に

ーー新製品IoT-DX-Kitで、人々の生活が具体的にどう変わるのでしょうか?

将来的には、一般の人がIoTの恩恵を受けられるようになると思います。直近のビジネスとしてはBtoBですが、将来的にはBtoCもやっていこうと思っています。戦略的には、まず企業側から普及していって、BtoBtoCに展開していく。Bの企業さんから、さらにCに展開するまでのところをお手伝いできるというところが弊社サービスの強みだと思います。

IoT-DX-Kitの特徴は、パッケージ化された選べるソリューションです。選べる多数のソリューションキットごとに、「基板」「SIMカード」「センサー」「組み立て」「プログラムの書き込み」「通信」「可視化ツール」がパッケージ化されていて、設置して電源を入れるだけで、すぐにブラウザ上でデータが確認できます。

手のひらサイズの基板

スマートシティも実現可能

カテゴリーで言えば、たとえばオフィスIoT/DX、街つくりIoT/DX、農業IoT/DX、インフラIoT/DX、医療IoT/DX、位置情報IoT/DX、環境IoT/DX、モビリティIoT/DX、食品管理IoT/DX、工場IoT/DX、ヘルスケアIoT/DX、見守りIoT/DX…。その中に、さらにいろいろなIoTがあります。会議室の空室管理、オフィスの空調管理、農家向け環境計測キットなど。スマートシティなどは百個もあれば余裕でできてしまいますね。即、実運用できて、法律を遵守していて特区でなくても普通に使えるので、自治体もお客さんになり得ます。

これからの世の中、どの業界もIoT/DXを実現しないと生き残っていけないと思います。今までのITの世界は、いかにIT化された情報をデータにしてゴリゴリ書くか、整理するか、分析するか、みたいな話でしたが、そもそもデータがどうやって上がってくるの、というところがありませんでした。弊社の強みは、今までみんなが手を付けていなかった「データを取得するためのシステム」を低コストで提供できますよ、というところなんです。

ーーどれぐらい低コストなんですか?

従来であれば数十万〜数千万円かかるIoT/DX環境構築を、通信費込みで月額1,000円から*実現できます。様々なIoT製品開発のノウハウを活かし、デバイスを自社開発することによって低価格を実現しました。(*キャンペーン価格を含む)

単独で通信するのでWi-Fiなどのインターネット環境を新たに構築する必要がありません。コンパクトサイズで、様々な環境下での運用が可能です。

まだ日本でしか考えていないのですが、電波タイプとしてはグローバルで使えます。将来的にはアジアなどでもかなりニーズがありそうです。

IoT普及をめざして

ーーCAMI&Co.の経営者として、イノベーティブなアイデアの創出や、イノベーティブ人財の育成について、どのような仕組みづくりや工夫をしていますか?

人材育成に関しては、我々自ら教育の事業もしているので、そういう教育ができる人を作るために、社内でも勉強会を開催したり、社外研修に行ってもらったりしています。IoTを教えるには、IoTの技術がわからないといけないので、技術と教育は密接に繋がっていると思います。あとはOJTで、できる人と一緒に仕事をしながら覚えてもらいます。

ーーIoT入門としては、神谷さんが最近お書きになった本が、大変わかりやすく、勉強になります。

IoTが広まればいいな、という想いを込めて出版をしました。
https://www.amazon.co.jp/最新-図解で早わかり-IoTビジネスがまるごとわかる本-神谷-雅史/dp/480071222X
そんなに難しいことは書いていなくて、一般的な内容を一通り書きましたので、これを見てIoTを始めようという人が増えればと思います。

株式会社CAMI&Co. 代表取締役 神谷 雅史 氏

ーー小中学生、高校生、大学生など若い世代に伝えたいメッセージは?

20代までは、仕事の量をこなす必要があると私は思います。その量が30代、40代になって、質に変わっていくのです。仕事に限らず、勉強することはたくさんあると思います。今まで日本が成長してきたのは、やはり量をやってきたから。大量の人が大量の量をやってきたからこれだけ成長したわけです。それが今は、人も少なくなっているし、量も減っているから、このままでは10年後、20年後、本当に使える人財がほとんどいないというような状況になるのではと危惧しています。そうなると、ハングリーな外国人たちが日本でどんどん活躍して、優しくておとなしい日本人は何も活躍できないというのが目に見えていると思います。

社会が若い人をあまり働かせない風潮も感じますが、「自分は活躍するぞ」と思って、若いうちはまず量をこなしたほうがいいというのが、最近すごく思うことです。

若い頃の仕事量がクオリティに

自分も20代は徹底的に仕事の量をこなしましたね。朝の9時から朝の4時まで平気で働いていたので、さすがに血を吐きそうでしたが、自分の限界に挑戦するのも貴重な体験です。人の2倍、3倍働いて、人の3倍、4倍成長する、というのを20代の頃に経験したから、今は30代になって、それが自然にクオリティに変わり、もはや量をこなさなくても一通りのことはわかる、という感じです。

学生時代もけっこうがんばりました。悔しいと思いましたね、できないことが。今の世の中、「できなくてもいいじゃん、いろんな価値観あるじゃん」みたいな感じに流れてしまう人が多いように見えますが、日本の将来が心配ですね。

ベンチャー企業と自治体が繋がる街、五反田

ーーCAMI&Co.をはじめ、テクノロジーで社会課題に挑戦するイノベーティブな企業が集まる、通称「五反田バレー」地区の魅力や、企業と地域の関わりについて、教えて下さい。

五反田に来て2年経ちました。家賃が手頃でベンチャー企業には魅力的でした。この状態が変わらないでほしいですね(笑)。品川区自治体にもお世話になり、ことあるごとにコミュニケーションを取り合っています。

株式会社CAMI&Co.様へ
「次世代レポーター」からの取材感想

「今回、株式会社CAMI&COへインタビューするまで恥ずかしながらIoTという言葉を耳にしたことがなかったため、どこか自分とは遠い世界のものだと思っていた。しかし、実際に話を聞いてみるととても身近なものになりつつある技術であることがわかった。
 世の中を豊かにしていくという大きなミッションをどのように実現していくか、普段、私が考えることがないようなものをどのように考えているのかインタビューを通して感じることができた。また、大学生や高校生などの若い世代に何を求めているか聞いたところ、とにかく量をこなすことという回答をいただいた。神谷社長自身も20代の頃はとにかく量をこなしたという。それが今に繋がっていると考えるととても大切なことだと思える。自分自身が今なにをするべきか、そのヒントになったように感じた。
 インタビューを通じて、普段見ることのない世界を見ることができたことが非常によい体験になった。」(立正大学心理学部3年 馬塲 孝佳)

株式会社CAMI&Co. ロゴマーク

株式会社CAMI&Co.主催「IoT-DX-Kit」発表イベント – 2019年10月2日(水)博報堂ラーニングスタジオ

株式会社CAMI&Co.は 2019年10月2日(水)に新サービス 「IoT-DX-Kit」と RPAホールディングス株式会社との提携に伴い、発表会を開催しました。新サービスの説明のほか、 ゲストにオープンプラットフォーム戦略の第一人者である 慶應義塾常任理事の國領二郎教授を招き、 次の時代のIoT/DXを考えるクロストーク、 懇談会などが行われ、様々な業界の関係者、著名人、メディアが多数集い、参加者様同士が情報交換や交流を楽しみました。

CEATEC – 2019年10月15日(火)〜18日(金)幕張メッセ

あらゆる産業・業種による「つながる社会、共創する未来」をテーマとしたビジネス創出のための、人と技術・情報が一堂に会する場、経済発展と社会的課題の解決を両立する「超スマート社会(Society 5.0)」の実現を目指すCEATEC2019に、株式会社CAMI&Co.も出展しました!

CEATEC 2019(株)CAMI&Co.ブースで「IoT-DX-Kit」の説明をする広報担当:西川 安奈 氏

品川区のイベントに登壇!

株式会社CAMI&Co.が、企業プレゼンします!

聞き手:木村京子(エシカルコンシェルジュ)

ダイバーシティから生まれるイノベーション

イベント「ダイバーシティから生まれるイノベーション〜STI for SDGs@Gotanda Valley〜」を開催します。

(※STI for SDGs=持続可能な開発目標のための科学技術イノベーション)

SDGs等のグローバル課題解決には、さまざまな価値観や文化をイノベーションに活かすためのダイバーシティ推進が不可欠です。五反田バレーでどう取り組んでいくか一緒に考えましょう!

日時:2019年12月6日(金)
午後7時半〜9時(受付開始 午後7時)
会場:SHIP 品川産業交流支援施設  4階 多目的ホール
定員:30名(申込先着順・参加費無料)
内容:
パネルディスカッション「ダイバーシティがソーシャルイノベーションを生む!」
田中裕実子(司会):(一社)未来技術推進協会
田中沙弥果:(一社)Waffle代表理事
安田クリスチーナ:Forbes 30Under30受賞者;InternetBar.org理事
企業プレゼン「五反田バレーでSTI for SDGsに挑戦する企業たち」(コグラフ株式会社、株式会社CAMI&Co.、他)
テーブルディスカッション(交流会)

主催:(有)ラウンドテーブルコム
協力:国際的学習プログラム研究委員会SDGsポイント研究所@ジャパン積才房(同)コグラフ株式会社株式会社CAMI&Co.(一社)未来技術推進協会(一社)Waffle
後援:品川区

お申し込みはこちら

AFPWAA Student Workshop@Gotanda Valley!

品川区の教育機関に所属の学習者に朗報!

SDGsポイント研究所@ジャパン[(有)ラウンドテーブルコム内]が協賛している、AFPWAA Student Workshopコンテスト(SDGsコンテスト)にご協力頂き、品川区の学習者に新たな機会を生み出すことが出来ました!

応募期間は2019年11月1日〜2020年1月31日※
※ 締切延長しています!

SDGsのゴール9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」をテーマとした画像をフランス国営通信社AFPの膨大なデータベースにアクセスしていただき、自分が記者になったつもりで、記事を書いてもらいます。

詳細はこちらから

企業インタビュー(1) コグラフ株式会社様

通称「五反田バレー」地区をベースに、STI(科学技術イノベーション)の力でSDGs(2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標)などの社会課題に挑戦する、素敵な企業をご紹介するシリーズ。

第一弾は、ソフトウェア開発とデータ分析力を活かしたトータルなソリューションをワンストップで提供、世界中から最先端の技術を習得したスタッフを揃え、AI関連の開発実績も豊富な、コグラフ株式会社様です。

2019年9月11日、西五反田の第2TOCビル6階にあるコグラフ株式会社様におじゃまして、CEO森善隆様にお話をうかがいました。

コグラフ株式会社 代表取締役 森 善隆 氏
五反田バレーの企業コグラフ株式会社のPaPeRo -iによる紹介。
2019年09月11日撮影。©︎(有)ラウンドテーブルコム。2019年度品川区五反田バレー魅力発信事業。

ーーコグラフのオフィスに入ると、真っ先に目に入るのがトランポリン(笑)と、働いている方々の国籍、人種、性別のダイバシティです。その方たちの間でマルチリンガルな会話が飛び交っている!

社員と家族を幸せにする会社

ーーさっそくですが、森さん、コグラフとは、どんな会社なのでしょうか?

コグラフの経営理念は、「社員と家族、すべての人を幸せにする」です。「データ活用とソフトウェア活用で世界を変える」というミッションを掲げるIT企業です。

コグラフ株式会社 受付

ーー今、世界には、SDGsに掲げられているような様々な課題があります。コグラフが重視するグローバルな課題とは?

やはり「持続可能性」が重要ですね。コグラフはITを活用して、より良い世界を作っていくことを目指していますが、ITでイノベーションを起こしても、ただの一発屋で作って終わりではなく、会社としても個人としても、経営理念にあるように、社員とその家族がハッピーな状態を持続できる、そういう製品・サービスを提供しながら成長していく会社でありたいと思っています。

ーーそういった社会課題に挑戦するコグラフの取り組みや、課題解決につながる技術についてお聞かせください。

コグラフは2010年設立、10年目の会社です。当初から今まで、基本的にお客様向けの技術サービスの提供をしてきました。ソフトウェア開発、アプリケーション開発、データ活用、AI分析も含めて、いろいろな技術サービスをお客様に提供することで、いろいろな課題を解決してきました。

コグラフが今、取り組んでいるのは、主にセールス・テックという分野です。労働人口が減り続ける中で、海外市場もですが、特に日本市場では、働き方改革も含めて、人にまつわる課題が非常に多いです。セールスやマーケティングの領域でも、人が活躍する場面が多いですが、そこをAI等のITを活用しながら解決していこうと取り組んでいます。

「ドラえもん」の世界へ

ーー具体的には、どんな取り組みでしょうか?

ここ2〜3年、特に声を使ったAI領域において、大企業を含め、いろいろな会社とコラボレーションしてきました。声を使ったAI領域こそ、今後の世界を変える可能性を持った領域だと感じています。今までは人間と人間がを使って会話をして、いろいろな仕事をしたり課題を解決したりしたわけですが、その一部を機械に置き換えていくところを目指しています。

−−身近なところでは、どういう場面で使われるのですか?

セールスのみならず、身近なところで声を使った仕事がいろいろあるかと思います。そこをより効率化して、人がやるべき仕事をもっと特化していく、たとえば声によるルーティンワークのようなものは機械にやらせてしまって、非常にコアな部分、人間がやるべきところだけを人間が快適な労働環境の中でできるような、そういったところを目指して今、開発を進めています。

AIと言うと、人の仕事を奪うなんていう文脈で語られることが多いと思いますが、我々はそうは考えません。AIが人に置き換わる部分はあるのですが、それは人の仕事を奪うというより、労働人口も減り続ける中で、無理な仕事、不快な仕事、苦痛な仕事をどんどん取り除いていく必要があると考えています。ITを使って人を支援するところからもう一歩踏み込んで、人がやらなくてもいい領域を、声を使ったAIによって置き換えていこうというアプローチです。

声を使ったAIなんて最先端の技術を使って新しいことに取り組んでいるのですねと、よく言っていただくのですが、もともと声を使って人間とコンピュータが対話をするというのは、1960年代の映画「2001年宇宙の旅」のHALとか、同時期に出た日本が誇るアニメの傑作「ドラえもん」のイメージがわかりやすいでしょうか。ドラえもんとのび太くんは、キーボードもマウスも指も使わず会話をしていました。あのスタイルが、人間が本能的に求める人間とコンピュータの関わり方の自然なスタイルではないかなと思います。それが1970年代、80年代、90年代、2000年代と、PCやスマートフォンが発達するに従って、指と目で人間とコンピュータが会話することがあたりまえだと考えられてきていますが、もう一回原点に帰って、本来の、人間が自然な形でコンピュータと触れ合う、人間がコンピュータに何かを助けてもらったり、指示を出したり、情報を得たりというのを、自然な形、声を使ったインターフェースでするという世界を作っていきたいなと思っています。

世代やジェンダーを超えて

かと言ってコグラフはロボット、ドラえもんを作るわけではなくて、もっと現代のテクノロジーを活用して、まずは一つ一つ実現していきたいなと考えています。前述のセールス・テックでは、いろいろな分野で声を使ったマーケティングやセールスの活動をしていますので、人がやらなくていい領域をだんだんと機械に置き換えていくというところがありますし、その他、最近は「OK、グーグル、天気予報を聞かせて」なんていうAIスピーカーを、家の中のみならず、オフィス、車、学校、屋外などでも、使える場面が増えてきていますので、その次代に向けた準備を進めている最中です。

我々の世代はPCやスマートフォンを活用しながらいろいろなITの利便を受けてきましたが、声を使うことで高齢者がITを利用する可能性は広がると思います。逆に、まだPCに触れる前の段階の未就学児が、「OK、グーグル」とかアレクサとかに問いかけて、天気予報を聞いたり音楽をかけたりする時代が来ているのかなと思います。私の子どもも3歳の頃から、「OK、グーグル、パプリカ(好きな曲名)をかけて」と言ってカラオケをして一人で喜んでいたり、週末に外出する時に天気予報を聞いたり、もうすでにそういった時代が来ています。

一方で、特に日本のパソコンやスマホを使いこなすデジタルネイティブの男性には、声でコンピュータと話すことに恥ずかしさや抵抗があるとよく言われるのですが、そういったジェネレーションやジェンダーを超えて、もっといろいろな方々がコンピュータとうまくつきあえる時代を作っていきたいなと思っています。

この流れは不可逆で、料理をしながらレシピを聞いたり、出勤前に着替えながら天気予報、ニュース、音楽を聞いたり、何かをしながらできる世界というのを、今まであまり人類は経験して来なかったのかなと思いますが、一度そういった世界に行ってしまうと、わざわざ指でテレビをつけたりスマートフォンやPCを開いたりして情報を得るのではなく、声で自然な形で同じ情報が得られるという時代になっていくのかなと思います。

PCやパッドを使えないような方にも、声で注文できたり、逆にその声の注文を、わざわざシステムを作らなくても受け付けることができて、コンピュータから人に伝えることができる世界を作っていきたいと思っています。

あらゆる業界で「声の会話」が持つ可能性

製造業界でも、製造ラインに人がどれぐらい残るかということがあり、発注から倉庫、製造、発送、といった過程で、今までの発想ですとコンピュータどうしが会話する、もしくは人間が操作することをコンピュータの言葉に置き換えてシステムを繋いでいったわけですが、これを逆に人間の声に乗せてしまう取り組みをしています。人間の声をコンピュータが理解できれば、システムの連携が非常に容易になるのです。人間とコンピュータのやり取りも、コンピュータとコンピュータのやり取りも、全部が声でできてしまうと、一気通貫でシームレスに繋がります。今までは、コンピュータの場合、全てを定義していないと会話できないという時代が続いたのですが、AI、機械学習、深層学習の時代になって、多少の新しい会話が入って来ても、いろいろな周辺の会話の分析から理解ができるようになり、今後、人とコンピュータ、コンピュータとコンピュータがどうやって「会話」をしていくかというところが変わっていくのではないかなと思います。

情報の整理という意味では、一回人の手を介して後は機械に学習させていくという流れは今後もっと増えるのではないかなと思います。機械自身もまさに学習を自分でできるようなテクノロジーがもう生まれ始めていますので、そのあたり、人間の雇用を生み出しながら、機械としっかり共存していくという世界が望ましいのではないかと思います。

今はマイクロソフトと組んで、いろいろコグニティブ(自然言語を理解・学習・予測するコンピュータ・システム及びその技術)のサービスを日本で広める活動をしています。そのテーマの一つが、強化学習という領域です。それ以前の機械学習、深層学習ですと、モデルを作るところ、タグをつけるところや、継続的にそのモデルを成長させたいというところに、ある程度、人の目や力が必要だったわけですが、強化学習の世界になると、機械が自律的に、自分で自分をバージョンアップしていける、こういう時代が来たということです。アメリカでは昨年発表された技術を日本で今、広めようということでマイクロソフトと一緒にやっています。

「声」で持続的な社会課題解決

テクノロジーによる社会貢献というところでは、たとえばオレオレ詐欺のような、声を使った、人間ではなかなか識別がつかないようなところまで、いろいろなテクノロジーを活用すると、それが本当に人間に繋いでいいものかどうかみたいなところも判別して、しっかりと高齢者を守ったり、そういった分野でも、声を理解して人間を理解するという活動は将来性があるのではと考えています。

電話がかかってきて高齢者が出て、相手の声色が少し違っていても、話の内容がおかしくても、人間が判断すると間違えることもある、それを、たとえば声の音質、話す内容の具体性など、しっかり機械によって判断させることで、これは嘘の電話だと見抜けるのですよね。たとえば「口座に振り込んでほしい」などのキーワードは、それだけでおそらくルールベースでもはじけるはずですね。また、たとえば誰かからの電話ということであれば、機械が一回そこの登録された番号に確認の電話を入れるとか。テクノロジーを使うと、アクションを含めていろいろなことをした上で、これが本当に人に繋ぐ電話かどうかというのを判定できる。

声が持つポテンシャル、声だけでわかることもいろいろあると思いますし、声で成立している会話というものが非常に人間の社会にとって重要な役割を果たしていて、会話を理解・分析することで、より人間がわかるようになってくると思います。たとえば前述の、嘘か本当かみたいなところもそうですし、次世代には、たとえば、この人は今何をほしいと思っているか、そういうことまでわかるような世界が来ると思います。

少しSFチックですが、人間はたぶんそれを本能的にやっているのだと思います。声質、仕草、状況などから、相手が何を考えているかをある程度理解しながら会話を成り立たせる、AIもそこまで行けると思っています。声と会話ひとつをとっても人間の理解のためには非常に大きな示唆を得られる可能性を感じます。

第三者的な評価も、もちろんできますし、逆に人間的な評価をしているところを受け止めた上での対話というのができるとも思います。

AIによるカウンセリングなども将来的には可能だと思います。ただ、現時点ではまだまだそれ以前のところでできることは非常に多いなと感じます。たとえば、学校の教室で先生との会話、友達との会話、授業の内容、それをどうやって覚えるか、そういったところでもいろいろ声の活用ができるだろうと思っていて、非常に身近なところにいろいろなテクノロジーが、もっともっと広まるといいなと。

今までは声を音声と見立てて、それをいかに理解するか、再現するか、そういった基礎技術を追求する場面が多かったと思いますが、いわゆるAIを絡めた、会話を理解することで人間を理解しようという動きが広まりつつあります。今はスマートフォンでAIと会話しても、片言で違和感のある会話だなあと思いながらも、もちろんその基礎技術も進化するのですが、それ以上に別のベクトルでいろいろなテクノロジー、プロダクト、サービスが今後出てくるのではないかなと思っています。

我々は本当に機械=コンピュータと会話することに、まだこの2019年とか2020年の段階ではあまり慣れていないと思うのですが、前述の私の子どものようなボイス・ユーザー・インターフェース(VUI)ネイティブの世代が生まれ始めているので、この子たちが将来どうなるかというのは、我々の世代からすると想像がつかないようなポテンシャルを持っているのではないかなと思います。

いろいろと社会は変わっていくと思います。いずれにしても、声を使ったテクノロジーを活用して、人類や社会が抱える課題を解決する、それも一過性のサービスやプロダクトではなくて、継続的に成長していけるようなモデルを作っていきたいなと思います。

コグラフ株式会社 代表取締役 森 善隆 氏

ダイバシティからイノベーションが生まれる

ーーコグラフの経営者として、イノベーティブなアイデアの創出や、イノベーティブ人財の育成について、どのような仕組みづくりや工夫をしていますか?

エンジニア集団コグラフの特徴として、まずグローバル性の高さがあります。世界各国から優秀なエンジニアが、ここ五反田に集まり、ボーダレスな環境で新たなイノベーションを起こそうと取り組んでいる、それが1つ目の特徴です。

10カ国ぐらいから、女性エンジニアもいます。ボーダレス、ダイバシティを追求したいと思っています。

技術的なバックグラウンドもそうですが、声を使った人と人とのコミュニケーションを追求するという側面でも、日本国内で日本人だけで作るよりも、将来の世界展開を踏まえて、今のうちから組織チームを作っていこうという取り組みをしています。

2つ目の特徴は、グローバルな視点の一方で、ローカルにも視点を置いていることです。五反田という地の利を生かして、地域と関わりを持ち、地域と共に持続可能なプロダクト、持続可能な会社を作り上げていくために、ローカルにしっかり目を向けて活動していくことが重要と考えています。

ーー小中学生、高校生、大学生など若い世代に伝えたいメッセージは?

世界を見てほしいと思います。年代を超えて、世界のいろいろな方々と多くのコミュニケーションを取る、そのためには英語が必須になってくるかと思いますが、英語をしっかり勉強した後でそういった環境に飛び込むというよりは、環境に飛び込んだ後でコミュニケーションを取りながら英語を学んでいくというスタイルがいいのではないかなと思います。

技術に関しても、テクノロジーの領域を志向するなら、そこは大学に行ってからとか、何か試験に受かってからではなくて、今できることをすぐに、今日からでも始めてほしいと思います。

ロゴに込められた想い

コグラフのロゴは、円を表しています。コンセプトとしては、いろいろな人たちや環境と結びつきながら成長していくということが、この円には現れています。ボーダレスで、グローバルに境目なく融合しながら成長していく、そういったコーポレートの特徴が、この円に込められているのです。

コグラフ株式会社 ロゴマーク

五反田は「コミュニケーションとコラボレーションが生まれる街」

ーーコグラフをはじめ、テクノロジーで社会課題に挑戦するイノベーティブな企業が集まる、通称「五反田バレー」地区の魅力や、企業と地域の関わりについて、教えて下さい。

五反田は、非常にバランスが良い街かなと思います。食、産官学、企業の規模感、土地の物理的な距離感、飲食業などの産業も含めコミュニケーションを取りやすい距離感で、みんなが壁をなくしてコラボレーションしようとしている街だと思います。いわゆるIT企業を中心に「五反田バレー」という活動もありますが、さらにもう一歩超えて、地域に住んでいらっしゃる皆さんも含めて、一緒に何かできる、そういったポテンシャルを持っている街ではないかなと思います。

非常に住みやすい街だとも思います。子育ても、品川区のいろいろな制度を活用しながら、快適に暮らせます。

職住近接も謳われて久しいですが、企業にとって、社員が近くに住める場所にオフィスを構えるのも非常に重要かなとも思います。五反田は、住環境としても商業環境としても非常に便利なので、我々としても社員に近くに住んでもらえるような場所を選んだつもりです。

IT企業なので、一般社団法人「五反田バレー」さんと一緒にいろいろなコミュニティを作る活動にも参加しています。さらに、IT企業だけではなく、地域の、たとえば大学、小中学校、不動産や製造業などいろいろな業種業界の方々とコラボレーションをしながら、次の新しい住みやすい五反田を作るために、僭越ながらご支援させていただいています。

五反田の有志企業により立ち上げられた五反田ウェルネスコミュニティ(通称:ゴタウェル)

コグラフの本棚
コグラフおすすめの書籍リストです。

関連記事:
五反田・大崎地区@品川区でベンチャー&中小企業向けSDGSイベントを開催しました!(2019年3月6日)

品川区のイベントに登壇!

コグラフ株式会社が、企業プレゼンします!

聞き手:木村京子(エシカルコンシェルジュ)

Gotanda-Valleyとは

デジタル9ch「TOKYO MX」公式YouTubeチャンネルより

先日、「強く美しく自立した女性」をテーマに、プログラマー、エンジニアを中心に、薬剤師、営業など様々な経歴を持った女性が集う「Tech女子」というグループの、渋谷でのイベントに出席してみました。

最初の自己紹介で「五反田のIT企業」と言ったら、イベント後の懇親会でTech女子たちに囲まれ、「五反田というと、〇〇社さんや、●●社さんがありますよね!」「CTCのDejimaもあって、いいですね!」と、人気者(?)になってしまいました。

IT企業やベンチャー企業、スタートアップ企業等が集積する品川区の五反田・大崎地域が、最近、アメリカのシリコンバレーにならって「五反田バレー」と呼ばれているのは知っていましたが、ここまで注目されているとは!

シリコンバレーとSDGs

元祖・シリコンバレーこと、カリフォルニア州サンフランシスコベイエリア南部には、Apple社、Facebook社、Google社など多くの新興企業や技術系グローバル企業が密集していますが、さすがシリコンバレーは未来を見ている!と感じさせるニュースがありました。

https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-04-30/in-silicon-valley-the-quest-to-make-gasoline-out-of-thin-air

カリフォルニア州マウンテンビューでスタートアップ企業を支援するシードアクセラレータのYコンビネータ社が、昨秋の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第48回総会」で発表された「1.5℃特別報告書」に素早く反応、大気中から炭素を除去するテクノロジーの開発に関する事業アイデアを募集し、応募した30社から、空気からガソリンを抽出する、プロメテウスというスタートアップに投資を決めたというのです。

この「気候変動に具体的な対策を」(SDG 13)のように、国連が提唱するSDGsに掲げられたテーマはすべて、グローバルに解決されるべき社会課題であり、すなわち、グローバルに資金や人財が集まってくる分野である可能性が高いとも言えます。

これまでの傾向を見ると、シリコンバレーのトレンドは数年遅れで日本で起きてくるようです。

ここ「五反田バレー」が、STI for SDGs(SDGs達成のための科学技術イノベーション)の発信地となりますように!

木村京子(エシカルコンシェルジュ)

写真提供:SDGsポイント研究所@ジャパン

STI for SDGsとは(3)今後の展望

STI for SDGs(持続可能な開発目標達成のための科学技術イノベーション)の背景、現況、そして未来について、解説します。

⇒STI for SDGsとは(1)国際的動向
⇒STI for SDGsとは(2)国内の取組

文部科学省公式YouTubeチャンネルより

今後の展望

文部科学省では、「持続可能な開発目標達成のための科学技術イノベーション (STI for SDGs)に関する基本方針【概要】」の中で、その役割と取組方針を、

・多様な研究機関等を所管し、主要な科学技術施策を実施していることから、政府全体の取組に積極的に参画し、主体的に貢献。
・既に各種施策を通じてSDGs課題の解決に寄与してきた実績等も踏まえつつ、さらに施策を充実。
・STI for SDGsの取組が、STIのあり方自身に変革を迫る契機であることを踏まえ、創造的・革新的技術シーズの創出とバックキャスト・デザイン思考の効果的な組み合わせ、多様な専門家が分野等を越えて結集して新たなアイデアの創出を促進する仕組み、各セクターを越境し繋ぐ人材の育成等が必要であるという視点を持って具体的取組を推進。

http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/kokusai/sdgs/__icsFiles/afieldfile/2018/12/21/1408737_001.pdf

と述べています。

そして、それに基づいて策定されたものが「STI for SDGs 文部科学省施策パッケージ」となっています。

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/12/21/1408738_001_2.pdf

「STI for SDGs」アワード

さらに、施策パッケージに基づくSTI for SDGsの推進を目指し、「STI for SDGs」アワードが今年度からスタートしました。

https://www.jst.go.jp/sis/co-creation/sdgs-award/

科学技術イノベーションを用いて社会課題を解決することによりSDGsの達成を目指す、地域における優れた取組を対象に、

・文部科学大臣賞(最優秀賞、1点)
・科学技術振興機構理事長賞(1点)
・優秀賞(3点程度)
・次世代賞(高校生以下の団体による取組を対象)(3点程度)
※賞の名称、点数などは変更になる場合があります。

の表彰が予定されています。

どんな取組が出てくるか、楽しみですね!

木村京子(エシカルコンシェルジュ)

写真提供:国際的学習プログラム研究委員会

STI for SDGsとは(2)国内の取組

STI for SDGs(持続可能な開発目標達成のための科学技術イノベーション)の背景、現況、そして未来について、解説します。

⇒STI for SDGsとは(1)国際的動向

JST(国立研究開発法人科学技術振興機構)公式YouTubeチャンネルより

日本政府の取組

2015年9月に国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(「2030アジェンダ」)を採択後、日本政府は、2016年5月に「SDGs推進本部」を設置し、同年12月に「SDGs実施指針」、2017年12月に「SDGsアクションプラン2018」、2018年6月に「拡大版SDGsアクションプラン2018」、同年12月に「SDGsアクションプラン2019」、そして2019年6月に「拡大版SDGsアクションプラン2019」を策定してきました。

最新の「拡大版SDGsアクションプラン2019」において、様々な分野での課題の解決に横断的に関わる科学技術イノベーション(STI)は、3つの重点項目の1番目「SDGsと連動する『Society 5.0』の推進」の中に含まれています。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/dai7/siryou1.pdf

こうした我が国のSDGs取り組み指針に呼応し、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の司令に従い、科学技術基本計画に基づいて、毎年度「科学技術イノベーション総合戦略」が策定され、SDGs推進体制の整備、ロードマップの作成等が着々と実施されてきました。

政府外の取組

経団連では、SDGs特設サイトを開設し、Society 5.0 for SDGsの推進を図っています。

同Webサイトには、「Innovation for SDGs —Road to Society 5.0—」(SDGsに資するイノベーション事例集)や、経団連が目指す未来社会「Society 5.0」の説明などが掲載されています。

https://www.keidanrensdgs.com

また、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)では、「持続可能な開発目標 (SDGs) の達成に向けた産学官NGO等の取組事例 科学技術・ビジネス・社会イノベーション による共通価値の創造 (2030年に向けて:2018年春版)」と題した冊子を発行し、SDGsの目標ごとに取組事例を紹介しています。

https://www.jst.go.jp/sdgs/pdf/sdgs_book_jp_2018.pdf

⇒STI for SDGsとは(3)今後の展望

木村京子(エシカルコンシェルジュ)

写真提供:CoderDojo品川御殿山

STI for SDGsとは(1)国際的動向

STI for SDGs(持続可能な開発目標達成のための科学技術イノベーション)の背景、現況、そして未来について、解説します。

UN DESA(国際連合経済社会局)公式YouTubeチャンネルより

国際的動向

持続可能な開発目標(SDGs)とは、「誰一人取り残さない」社会を実現するために、経済・社会・環境に関わるさまざまな課題を統合的に解決していこうと、2030 年までに世界が一丸となって取り組むべき目標として、2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」(「2030アジェンダ」)に掲げられたものです。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf

その「2030アジェンダ」の本文中で、STI(科学技術イノベーション)は、

ICTと地球規模の接続性は人間の進歩を加速化させ、デジタルデバイドを埋め、知識社会を発展させる大きな潜在力があり、医学やエネルギーのように多様な幅広い分野において科学技術イノベーションが持つ潜在力もまた同様である。(パラグラフ15より、強調筆者)

と、その重要性が述べられている他、

我々は、持続可能な開発目標を支持するために、アディスアベバ行動目標で合意された技術促進メカニズム(TFM)を立ち上げる。TFM は、加盟国や市民社会、民間セクター、科学団体、国連やその他のマルチ・ステークホルダー間の協力に基づいている。また、その構成は、SDGs のための科学技術イノベーションに関する国連機関間タスクチーム(以下、国連機関間タスクチーム)、オンライン・プラットフォーム、SDGs のための科学技術イノベーションに関するマルチ・ステークホルダー・フォーラム(以下、 マルチ・ステークホルダー・フォーラム)から成っている。(パラグラフ70より、強調筆者)

と、技術促進メカニズムについても記述されています。

また、ゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」において、17.6、17.8の2つのターゲットが「科学技術イノベーション(STI)」に言及したものとなっています。

https://sustainabledevelopment.un.org/TFM/STIForum2019

2016 年以降、SDGs に関する国連STIフォーラムが毎年開催されています。

STI は、SDGsの諸課題に「横串」として関わり、限りあるリソースを最適化し、解決へと導く「切り札」として、広く国際社会全体から注目されているのです。

⇒STI for SDGsとは(2)国内の取組
⇒STI for SDGsとは(3)今後の展望

木村京子(エシカル・コンシェルジュ)

写真提供:国際的学習プログラム研究委員会CoderDojo品川御殿山