企業インタビュー(5) 株式会社ギフティ様

株式会社ギフティ 代表取締役 太田 睦 氏

通称「五反田バレー」地区をベースに、STI(科学技術イノベーション)の力でSDGs(2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標)などの社会課題に挑戦する、素敵な企業をご紹介するシリーズ。

第五弾は、ギフトで「人と人」「人と企業」「人とまち」をつないでいくことをミッションに、eギフトプラットフォーム事業「giftee」を推進する、株式会社ギフティ様です。

2019年10月8日、東五反田の齊征池田山ビル2階にある株式会社ギフティ様におじゃまして、CEO太田睦様にお話をうかがいました。

株式会社ギフティ 代表取締役 太田 睦 氏

ーー2019年9月20日に東証マザーズに新規上場したばかりのギフティのオフィスに入ると、お祝いの花でいっぱいでした。

上場直後の株式会社ギフティのオフィス

ギフトで、「人と人」「人と企業」「人とまち」をつないでいく。

ーーさっそくですが、太田さん、ギフティとは、どんな会社なのでしょうか?

株式会社ギフティは、eギフトというサービスを中心に事業展開をしています。eギフトとは、スターバックスコーヒー、サーティワンアイスクリームのような実店舗で、コーヒーやアイスなどの商品サービスと引き換えることができる電子チケットのことです。eギフトの生成、流通、販売を、川上から川下まで一気通貫で行っている会社です。少額のギフトを個人から個人へ贈ることもできるし、法人であれば企業のキャンペーンの景品として配ることができる、そのようなサービスを展開しています。ギフトで、「人と人」「人と企業」「人とまち」をつないでいく。それが当社のミッションです。まだ国内では認知度が低いeギフトを普及させ、日常的な習慣化を目指しています。ギフティは、この目標を達成するために行動指針として定めているのは、一つ目が「エグゼキューション」、日本語で「考え抜く」「やりきる」というもの。二つ目が「スピード」。圧倒的なスピードで関係者を驚かせていこう、というところ。三つ目は「One Team」。社内のチームで物事を成し遂げていこうということ。最後は「10X」、非連続の成長や成果を目指そうということ。以上4つを行動指針として設定しています。行動指針を社内で浸透させるために、評価の中に組み込んだり、社内の日常会話でもこういった言葉を使って説明したり、社内にポスターを貼ったりグッズを作ったり、ということもしています。

ーー今、世界には、SDGsに掲げられているような様々な課題があります。ギフティが重視するグローバルな課題とは?また、そういった社会課題に挑戦するギフティの取り組みや、課題解決につながる技術についてお聞かせください。

当社のeギフトのプラットフォームにより、様々な課題にアプローチできていると考えています。まず一つ目はソフト面です。今まで人々がちょっとした気持ちを形にする時、あまり手段がなく、言葉で伝える以上のことをしたい場合、実際にものを買って、配送したり、手渡しをしたりで、かなり移動が伴い、CO2も出ると思います。それに対して、贈り手はその場で気持ちを形にしオンラインで贈ることができて、受取った方は近くの店舗で商品と引き換えていただけるのがeギフトなので、かなり環境に優しいサービスです。

二つ目は、地域間の格差をなくしていくというところです。今、新規事業で「地域活性プラットフォーム」と称して、地域通貨、地域商品券を電子化する「Welcome ! STAMP」という事業も展開していて、地域内での活性化や、都市部から地域にインバウンドでお客さんを呼び込むようなサービスや地域限定で利用できる電子商品券、電子乗車券などのソリューションを用意し、それによって都市部と地域の差分をなくしていくことにも取り組んでいます。

「Welcome ! STAMP」のサービスを説明します。「Welcome ! STAMP」のソリューションの1つである「e街ギフト」は、2019年11月に瀬戸内市に初めて導入いただきました。ふるさと納税の返礼品として、今まではお米、お肉、果物など、土地の名産品を郵送でお届けすることが多かったのですが、今回は「e街ギフト」と名付けて、地域内で使える商品券(従来で言えば感謝券)の電子化をしました。また、旅先で納税してその場で返礼品として「e街ギフト」を受け取り、滞在中にすぐ利用できる仕組みとして「旅先納税システム」もあわせて提供しています。

e街ギフトと旅先納税システムを利用すると、寄附後にふるさと納税の返礼品として「e街ギフト」をメールで即時に受け取れます。お近くのe街ギフトが使える加盟店に持っていくと、表示されている金額分、即日買い物ができます。出張や旅行中に寄附と返礼品の消費が可能という点で即時性もありかつ利便性も高く、地域経済にも貢献することのできるサービスです。

環境面と地域間格差の課題にソリューション

テクノロジー面では、これを実際に加盟店で使う時に決済をする必要があるのですが、QRコード決済、SuicaなどICカードを使った決済、クレジットカード決済がありますね。まずQRコード決済だと、利用者がアプリをダウンロードしないといけない。ただインバウンドでは、日帰りや一泊二日などショートステイの方にアプリをダウンロードしてもらうのは非常にハードルが高いです。e街ギフトはウェブブラウザで決済ができます。ICカード、クレジットカードの場合は、専用端末を各加盟店に配らないといけませんが、工事費含め1台10万〜15万ぐらいすると言われます。店舗や自治体側の負担が非常に大きくなるので、当社では電子スタンプというものを提供しています。1台2000〜3000円ぐらいのスタンプを各加盟店に1台、置いておいて、e街ギフトをお持ちのお客さんが来たら、これをお店でポンと押すと決済がされます。このスタンプの特徴は、人間の静電気で動いていて、電池、充電が不要なことです。通信もお客さんのスマートフォンを介して行うため、特別にネットワークを用意する必要もありません。各スタンプの裏側に6個の点がついていて、スマートフォンに接地したタイミングで、スマートフォン側でどの座標が押されたかを認識して、端末がインターネットで当社のサーバと通信すると、誰が、どこの店舗で、今いくら使ったのか、というのが、裏側で記録される仕組みになっています。QRコード決済のようなアプリのダウンロードも不要、10万、15万するような決済端末も不要で、電子決済ができるというソリューションです。

また、地域通貨も、東京都の離島で「しまぽ通貨」、長崎県の離島で「しまとく通貨」を電子化し、現在も運用しています。

「しまとく通貨」「しまぽ通貨」は、もともと紙でした。「しまとく通貨」は、紙の時代に3年間で100億ぐらい流通されていたプレミアム付商品券で、通常プレミアム付商品券は地元住民が買って地元で使うことが多かったのですが、これは少し特殊な通貨で、観光客だけが買えるのです。島外の方にそのプレミアムを目的に来ていただいてインバウンドを増やすという施策なのですが、100億も流通していると、紙の印刷代や、それをお店で管理したり処理したり換金したりする手間がかなり発生して、この部分を何とか解決できないかという話がありました。それが、この事業に参入したきっかけでした。

ギフトは、「人と人」「人と企業」だけではなく、「人とまち」をつなぐのにも活用できないかと、まさにそういったお話があったことをヒントに、少しずつ事業を拡大してきたのです。

株式会社ギフティ ロゴマーク

ロゴに込められた意味

ーーロゴが新しくなりましたね?

前に使っていたロゴは、会社を立ち上げて翌年、サービスを開始したタイミングで作ったもので、当時はまだCtoCサービスの「人と人」の部分だけを展開していましたが、「人と企業」「人とまち」の事業も増えてきたので、ロゴ自体も、今の状態に合わせたアップデートを行いたいねということで、リニューアルを図りました。モチーフになっているアスタリスクには3つの意味が込められています。アスタリスクにはもともと「小さい星」という意味があり、ギフティのギフトは非常に少額でカジュアルなものが多いのですが、もらった瞬間すごく嬉しいというよりは、心にキラッと小さい星が煌くような、そんなイメージが一つ。二つ目は、このアスタリスク、よく見るとそのデザインにリボンのモチーフを使っています。もう一つ、ギフティは「人と人」「人と企業」「人とまち」の掛け算で成立する価値ですが、アスタリスクというのは、エンジニアの使うプログラミングの言語だと掛け算の意味なんです。この3つの意味を、この新しいロゴに込めています。

ーー上場して変化はありますか?

株価を気にするようになりました(笑)。やはり責任感みたいなものは、今の方がより感じるようになりましたね。企業は社会の器と言いますか、まだ顔を合わせたことのない株主さんも含め、そういった方々の期待にちゃんと答えたいという気持ちが今、自然と湧いてきている状態です。

「eギフトってパーツのようだね」

ーー今後の展望は?

ギフティのメリットの一つは「ありがとう」の記録が残ることです。Facebook連携もしているので、将来的には、Facebookの投稿などから出産などのライブイベントを抽出してくるというのもあるかと思いますね。小さいからこそ、いろいろなシーンでハマりやすくて、「ギフティのeギフトってパーツのようだね」とよく言われます。パーツなので、どんなものにでも組み合わせることができるのです。だからこそ、いろいろな会社から協業のご相談などをいただきやすいのかなと感じます。

ーーギフティの経営者として、イノベーティブなアイデアの創出や、イノベーティブ人財の育成について、どのような仕組みづくりや工夫をしていますか?

当社は今、創業して今年で10年目を迎えますが、まだ新卒メンバーは少なく、中途メンバーが非常に多いです。社内の9割以上は中途入社で、前職はIT、事業会社、コンサルと様々、もともと弁護士をしていた人もいます。皆、魅力的なスキルを持ち、そのスキルを生かし、それにeギフトという事業をかけ合わせて、それぞれが活躍しています。会社から何か「これをやってください」とオーダーすることもあるのですが、それよりも、個々人の意志を尊重することをかなり重視していて、自身がどんなことをこの会社で実現したいのかを聴いた上で、最適なアサインをしていくことをだいじにしています。本人としても興味範囲であるほうがアグレッシヴに仕事に向き合うと思いますし、新たなアイデアなどが生まれやすいかと考えています。

社会を前身させるために起業

ーー小中学生、高校生、大学生など若い世代に伝えたいメッセージをおねがいします。

学生時代は勉強に限らず自分が好きなことに思い切り飛び込んで、何か一つを磨き上げると、その後の人生にすごく役立つかと思います。私の場合は、中学高校の時はテニス、大学の時はアカペラにかなりの時間を費やしたことで、そこで生まれた人脈、一つのものへの向き合い方、そういったところが今に生きているかなと感じています。

大学3年生で就職活動をしていた時に、当時ベストセラーになった『ウェブ進化論』という本を読みまして、ちょうどウェブ2.0と言っていた時代で、その本を読んで初めてシリコンバレーの、例えばGoogle,Amazon、Facebookという文化を知りました。お金稼ぎのためではなく、社会を前進させるために世界中から本当に優秀な方々が集まって、プロダクトを作って、それで世の中が前に動いていく、そこで生まれた収益をまた事業に再投資をしていく、というところが、働き方としてすごく魅力的に映りまして、そういった会社を自分で起こしたいと思ったのが、起業のきっかけですね。

株式会社ギフティ 代表取締役 太田 睦 氏

ノウハウや知見を共有する場が自然と生まれる街

ーーギフティをはじめ、テクノロジーで社会課題に挑戦するイノベーティブな企業が集まる、通称「五反田バレー」地区の魅力や、企業と地域の関わりについて、教えて下さい。

昔に比べてスタートアップが五反田に集中して、もちろん経済的な理由もあるとは思うのですが、密集することで、エンジニアの勉強会やCFO会みたいなものが五反田で開催されて、かなり熱気もあり、それぞれのノウハウや知見を共有する場が自然と生まれ、それがとても良い刺激になっているなと感じます。五反田スタートアップマップみたいなものもできて、エンジニアの集まりなども最近、五反田での開催が増えてきている印象があります。当社の社員も勉強会やミートアップに参加してプレゼンもしたり、積極的に情報交換していると思います。

ギフティ初のユーザー向けオフラインイベント「giftee GOOD STORY AWARD」– 2019年10月18日(金)・19日(土)有楽町マルイ1階エントランス

gifteeを利用して「ギフトを贈った」「ギフトを貰った」際の印象的なエピソードをオンライン募集し、応募のあった約100エピソードから社内投票によって選ばれた3つのエピソードがノミネート作品としてパネル展示されました。2日間で有楽町マルイへ来店した方々の投票により、大賞が決定しました。

ギフティ初のユーザー向けオフラインイベント「giftee GOOD STORY AWARD」- 2019年10月18日(金)・19日(土)有楽町マルイ1階エントランス

聞き手:木村京子(エシカルコンシェルジュ)

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